​ぼくシて

TOVショタフレン×お兄さんユーリ

2014年に頒布した同人誌の再録です

お手に取ってくださった方々

ありがとうございました。

内容が酷いので読み返してません

​正式なタイトルは「おにいさんぼくとえっちをシてください」です。長い

 昔からこの容姿の所為で散々な目に遭って来た。

 

 小学校から中学生にかけての数年間は一人で静かな道を歩いていると変質者に追い回されるのは日常茶飯事、最高記録は露出狂に一日に三度は出会ったこと、記憶に残っているのは運動会が終った後に「体操服をください」と大人しそうなオジサンに土下座された事だろうか。コイツにも家族がいるのだろうかと思うと切なくなって、そのままコンクリートにキスをさせる形で何も言わずに頭を踏んづけて帰った。

 ガキの頃に死んだ母親譲りの女顔。

 母を知る人が云うには生き写しの様にソックリになっていくと歳を喰う度に云われてきた。

 焼いても赤くなるだけの青白い肌、切っても刈ってもすぐに伸びる髪といい望んでもいないのに女と間違われ続けた少年期。

 オレの為に集団下校制度が小学校では生まれ、ランドセルには大量の防犯ベルを近隣住民からつけられる始末。

 そうして望み続けた声変わりが訪れ、男であると云う事を現れた変質者に伝えると一部の粘着質な人達にはそれが余計に堪らなかったらしく、益々おかしな方向へと奴らの性癖が変化して行く。

 そんなオレも護身術用に習ったの剣道のお陰か、少しずつ男らしい身体にもなっていって高校生になる頃には変質者と遭遇する事も格段に減った。

 万が一遭遇しても相手を返り討ちにさせる程度の腕前は磨いているつもりであったので気にもしなかったし、気付けば180センチという女と間違えるには困難な身長も手に入れていたのだ。

 産まれた時から敵まみれの境遇を味わって来た為に性格は喧嘩っ早くもなるし、負けたら終わると云う生存本能に近い闘争心も自然に芽生える訳で。

 高校の頃は成り行きで少しやんちゃをしたり、気に入らない上級生に喧嘩を売られて真顔で川に突き落としたり、エトセトラをして来たオレであったが今はもう二十一歳を迎える。

 尚、突き落とした先輩は泣いてはいたが無事であった。

 高校卒業と同時に知り合いが営む創作料理店で手伝いをし乍ら料理の勉強をして、飲食店を営むに至って必要な資格を取る為の講習会を調べたりなど、それなりに目指していた事を形にしている訳である。

 忙しい毎日だったがそれなりに幸せであった。

 いい雰囲気になった客や女友達は何人かいたが、恋人は出来ず。だが今は欲しいとも思わなかった。

 しかし、そんなオレに明るい兆しが。

 当たると有名らしい占い師の元へ先輩に連れて行かれた日のこと。

 占いなど微塵にも信じた事の無いオレは全く乗り気ではなかったが、断る事も出来ずに胡散臭い占い師に名前と生年月日を告げて見て貰ったのだ。

 仕事はこれからもっと上手くいく、心配はいらない、努力は怠るなと一番心配だった自分の未来については明るいと語られて、たかが占い、されど占い。信じてはいないがお先真っ暗よりも良い方が決まっている。

 それから自分の事を話した訳でもないのに、何だかんだと言い当てる占い師に少し驚いて、気付けば耳を傾けていた。

 肩の怪我に気をつけろ、ここ一ヶ月の内の遠出は勧めない……と云ったものまで。

 そして結構な時間が経って、そろそろお開きかと礼を云って帰ろうと席を立ったとき。

 腕を掴まれ、真剣な顔で告げられたのだ。

「貴方の運命の人が近づいてる」

「……うんめい?」

「一生を共にする相手です」

 まだ二十一何ですけど、と云った顔をしたのがバレたのか、占い師は首を振った。

「運命とは確実に誰しもが与えられるものなのです。きっとお相手は貴方の事を以前より見ていた人……心当たりは?」

「あ……まぁー……不特定多数」

 先程述べた様に自分を気に留めた女性客なら、と頭に浮かべて応えると、占い師は大きく頷いて「其の中にいます!」と自信満々に言い放ち、あまりの勢いに引き気味となったオレを置いて“占いの館”と看板が立てられたテントから追い出した。

 どうだった、と聞いた先輩に「やっぱこういうのは得意じゃない」と苦く笑ってその場を後にした。

 運命の人か、と頭に留めていたのはその日の晩まで。次の日の朝になった頃には、もうすっかり忘れていた。

 

 

  ◇

 

 

 今日は店が暇だった事もあり、久々に夕方には帰路についていた男の影を夕陽が後ろから長く伸ばしていた。

 明日は店が休みだし、久々にこんな時間から酒でも飲むかと片手にはコンビニに立ち寄って買って来た酎ハイの缶が数本。

 ブラブラと歩いていると真っ黒に日焼けした小学生と思しき集団と擦れ違って、もう夏休みも終わり間際かと今日の日付を思い出す。

 自分が小学生の頃は夏休みの宿題なんてものを真面目に取り組んだ事があっただろうかと思い出に耽って、見慣れた通りを抜け、自分の住まいである二階建てのアパートに辿り着く。

 カン、カンと錆びた階段を上り、家の鍵を出して、ふと前を見やれば何度も顔を会わせた事がある、幼い背中が部屋の前に佇んでいた。

 

 その背中は階段を上りきった音に振り向き、ユーリの姿を確認すると一気に明るくなって少し駆け寄り、そうして少し考えた様に顔を赤らめて足を止めたりと忙しい様子であった。

 そんな彼らしくもない動作に首を傾げて、自ら近寄ると目線が合う様にしゃがみ込んでやる。

「フレンじゃねぇか。どうした」

「こっ、こんにちは!」

 少年はアパートの隣に建っている、白い一軒家に住むフレン・シーフォであった。

 彼とは平日には毎朝顔も会わせるし、家の鍵をフレンが忘れてしまった日などは、よく家に招き入れてやったりもしていたものだ。

 確か今年で小学校四年生。高校三年の頃から、もう既にこちらに移り住んでいたので、何だかんだと数えれば三年程の付き合いである。

 彼が小学校一年生の頃から知っていたが、たまにタメ口が混ざる程度で殆どは敬語。自分をおにいさんと呼んで慕っており、一人っ子故かとても懐いてくれていた。

 礼儀正しく、幼い頃の自分がそうだった様に少女と見間違える様な、どちらかと云えば中性的な顔立ち。

 同級生と比べると背も低く、微笑むと柔らかなブロンドも映えて本当に可愛いらしい、天使の様な子であった。

 

 元より子供の相手は嫌いでなかったし――赤ん坊などの意思疎通が難しい相手は得意ではないが――フレンとはそれなりに仲が良いと云えた。最近はしなくなったが、それこそ自分が高校生の時などは自転車の後ろにフレンを乗せて、近所の駄菓子屋に連れていってやったりもしていたくらいだ。勿論、菓子代はユーリ持ちである。

 そんな事も最近しなくなった――その理由は、フレンが自分を少し避ける様な態度を取り始めてからであった。

 顔を会わせれば表情をコロコロ変え、嬉しい様な複雑な様な、まるで自分と会うのは気まずいとでも云う様な。

 そろそろ年上の人と一緒に遊ぶ、と云うのも恥ずかしくなる年頃かと思って深く追及もせず、軽い挨拶を交わすくらいで自分も深くは考えなかった。

 加えて同時に仕事の方も忙しくなって、ユーリもそんな暇はなくなってしまったのだ。

 少し寂しくもあるが、まぁ仕方のない事でもある。

 可愛がっている子供の心の成長を見ている様でユーリは嬉しかったし、特に気にしてもいなかった。

 そんなフレンが、自分の帰りを自分の部屋の前で待っていたのだ。ただ事ではないと薄らと感じ取って、それでも柔らかい口調のまま、部屋の鍵を開けてフレンを部屋に招き入れる。

 この一室にフレンが来たのは一年ぶりくらいだろうか。こんな事ならコンビニで酒だけでなく菓子も買って来てやれば良かったと少し後悔する。

 けれど自分が甘党なだけあって、部屋に行けば幾つかの菓子のストックがあり、適当にあった一口ドーナツや冷蔵庫の中の羊羹を取って相も変わらずちゃぶ台の前で行儀よく座っているフレンの前に持って行く。

 缶ジュースも其処に添えて。

 布団も敷きっぱなしの和室に、身成の良い子供が正座をしていると云うのは何とも変な光景である。

 目の前の菓子に気付き、有り難うございます、とやや俯いていたフレンが頭を下げた。

「んで? 家の鍵でも忘れたか?」

 中々自分で手を伸ばして菓子を食べようとはし無いフレンを見計らい自らビニールちぎって一口サイズのドーナツを摘むと、フレンの口元に持って行って所謂「あーん」の形で食べさせようとすれば派手に顔を赤らめたフレンが、あむ、とドーナツを口に挟んでモゴモゴと恥ずかしげに食べた。

 そんな小動物の様な反応に笑うと、怖ず怖ずとフレンはオレを見て、頬張り乍ら静かに話し始めた。

「あ、えっと、ぼく、おにいさんと……話したくて」

「オレと?」

「実は、前から言いたい事があって、でもおにいさんと全然会えなかったから……」

「あー……わりぃ、最近仕事が忙しくてな」

 もしかすると、こうしてフレンが家の前で自分を待っていたのは今日が初めてじゃないのかも知れない。

 昨日も一昨日も、こうして夕方まで自分を待っていたのかも知れないと思うと何だかくすぐったくなり、謝った後フレンの頭を撫でて「待たせたな」と微笑んだ。

 それにしても、自分に一体どのような用件なのだろう。

 参観日に来て欲しい?――いや、この子には立派な父と、綺麗な母親がいる。自分の様な男を態々呼んだりしないだろう。それとも、悪い点のテストを隠して欲しいとか――でも、フレンは成績が良かった筈だし。

 云い辛そうなフレンをフォローしようと先に要件を言い当ててやろうとしたがちっとも浮かばない。こんなしっかりした子が、自分の様な大人に頼る事などすぐには思いつかなかった。

「どうした、早く言ってみろって」

 こうなれば急かすしか出来まいと、頬杖をついて成る可く優しい声色で聞いてみる。

 フレンは口を開けたり閉じたり、パクパクと動かしてからゴクリと音がするくらいに固唾を呑み込むと、ユーリの瞳を真っ直ぐに見つめた。

 

「…………あの、ずっとキレイだなっておにいさんのこと、思ってて……っ」

「あー成る程、そういうこ………………あ?」

 

 ――綺麗、きれい、キレイ――……オレが?

 ガクリ、と肩の力が抜けた様な感覚。

 キレイ、なんて褒め方をされたのはいつ振りだっただろうか。それこそ昔はよくあったが、こんな180センチもの身体をした男に綺麗だなどと面と向かって云って来たチャレンジャーはいなかった。しかしフレンはどうも、からかったり、と云った風には見えない何とも真剣な顔である。

 これならいっそからかわれた方が楽である。妙な恥ずかしさに顔にほんのりとした熱が集まるのを感じ、何か話題を変えようと考えるが特に何も浮かばず。素直に今は礼を云うべきなのだろうか、男であると云うプライドも忘れてフレンに「……どうも」と一礼をする。

 云いたかった事とはこんなこっ恥ずかしい事だけかと疑問も抱いたが、フレンも一杯一杯らしく言葉に詰まっている。

 昔から可愛がっていた、良く知った子供に改めて容姿を褒められ――ているのかは分からないが――ると存外気恥ずかしいものである。しかも、彼曰くずっとそう思っていたそうだし。

 今日は兄の日か何かなのだろうか。感謝でも伝えてくれるつもりなのかは分からないが、フレンの言葉を待つ間、ユーリは自然と口を噤んだ。

 暫く時間を置き、漸く何かを決めた、と云った表情をしたフレンがユーリの顔を正面から見つめ直して「だから」と言葉を放つ。ユーリにはそれが、スローモーションの様に視界に広がり、飛び出た言葉は聴覚を支配するかの様に木霊する。

 

「おにいさんっボクとえっちをシてください!」

「……はい?」

 

 顔を真っ赤にした少年が、正座をしてこちらに頼み込んでいる。

 ユーリには何かの聞き間違えかと思える様な光景で、言葉を挟もうとするが勢い余ったフレンの声が次々と降り掛かって言葉など発する事も出来ない。

「僕、この前、中学生の人達が話してたの聞いて……好きな人とする最後のいべんと……? が、えっちだって!」

 ツラツラとフレンが言葉を並べる中、この発言にハッと我に帰る。

 好きな人と最後にするイベント。成る程、間違ってはいないが、この様な表現をすると云う事は自分の言った言葉の真理が分かっていないままの発言なのではないだろうか。

 否、そうに決まっている。こんな子が唐突に人にセックスを迫ったりするものかとユーリは呼吸を整え直して、あの、だから、を繰り返すフレンに制止を促した。

「……あのな……その~……そういうのは、愛し合ってる者同志じゃねぇと意味ねぇんだよ。夫婦とか」

 自分らしくない、教科書の様な意見ではあるが、間違ってはいない。過去に何度か一夜だけの関係を持った女性はいたが、そんな存在は目の前の純朴な瞳の前では忘れ去られていた。

 えっちとは、を突き立てられたフレンはポカンとして、次第に眉がハの字に歪んでゆく。

「……じゃあ僕はおにいさんとえっち出来ないんですか?」

 これがコント番組であったら。今まさに、ユーリの頭の上に盥が降ってきた所だろうか。再び気が抜ける様なフレンの意見に苦く笑って、そもそもの疑問を今度はユーリから投げかける。

「てか、……えっちってナニか分かってんのか」

「……えと、わかんない、です……」

 やっぱりか、の言葉はユーリは呑み込んだ。

 最近の子供はマセてると聞くが、この年齢で流石にセックスとは何たるかを熟知しているとは思えなかったのだ。

 しかも、フレンに限って。

 好きな子はいないのかどうかの話しだけでも顔を真っ赤にして首を横に振っていたような純粋なフレンから、そんな事を語られた日には目眩で倒れてしまいそうだ。

 心に余裕が出来たユーリは、まず目の前の少年に何を教えるべきかを心の中で纏める。

 間違えた性知識は後にフレンに恥をかかせ兼ねない。そんな事は防ぐべきだとユーリは自己流の性教育をしようと向き合ったフレンにこちらも正座という形で応え、少し息を吸ってから言葉を選びつつ慎重に語りかける。

「エッチっつーのはだな、子供を……その、つくる……いや、子供を実らせる……行動でだな」

 これがまた意外にも難しい。普段は明け透けな言葉遣いしかしないからか、子供でも分かる様なソフトな云い回しは非常に困難であった。

 ましてや規制用語を連発するなどもっての他であるし、フレンにそんな言葉を兄心に知って欲しくもない。下ネタと云うものはまだまだフレンには早い様に思えた。

 決して彼が子供だからどうの――そりゃ関係はしているが――だけでの事でなく、これは自分のエゴでもあった。

 周りの大人に変な事をされそうになったり、入れ知恵をされたり。次第にそれは慣れてはいったが心の何処かで当然恐怖も感じていた。自分が性の関わりを持つ目的として近寄られている事も理解したし、きっとクラスの誰よりも性とは何か、という一つのテーマへの理解は早かった様に思える。

 支配であったり、快楽であったり。知りたくもなかったが、自分が一部の男性から向けられる視線の多くはそういう事だった。

 性行為の手順を知っている訳では無かったが、きっとそれは今の自分が知らなくても良い事だと無意識下の防衛本能が訴えていたのだ。

 目の前のこの少年は、自分の様に穢れた目を向けられた事なんてない筈だ。あったとしても、そんな事には気付かないだろう。だからこうも、キレイなのだ。

 ユーリはフレンを甚く気に入っていた。

 理由は可愛い、ただそれだけなのだが。年相応な幼さや、もちろん顔や行動だって何から何まで自分を癒す本当の弟の様に思える子であったから。そんな数少ない癒しが、今自分の目の前で性への第一歩を歩もうとしてる。

 その手助けを自分がしようとしている。

 言葉選びに苦悩するのも、分からなくはなかった。

 あの手この手で、無駄なジェスチャーも加え乍ら解説する。きっと自分が聞き手であれば、このオッサンなに云ってんだと云いたくなる様な内容であったがフレンは真剣に耳を傾け、頷いてみせた。

「つまり植物の受粉と同じだと捉えていいんですか?」

 しかも自分が説明した内容よりも分かり易い比喩で確認をしてくる。流石フレン、と顔の筋肉が強ばりを解いたのを感じる。

「それ。受粉。んな無闇矢鱈にしちゃいけねぇの。責任が問われる行為なんだよ、お前も男なら知っとけ」

 分かったかと聞き返せば、フレンは一応頷いてみせたが再び瞳をこちらに向けた。次は何を言われるのかと思わず構えるユーリを他所にフレンの小さな手がユーリの手を握った。

「ぼ、ぼくっセキニンなら取ります!」

 

 理解しても尚、引き下がる気はゼロであった。

 そうじゃない、そこじゃないんだフレン――頭を抱えて一から話そうとはするが、あまりに手を強く握られて会話を戻す気にもなれない。

 子供の握力は少し心地良くて、自分が難しく考え過ぎなのかも知れないと少し冷静になる。

 えっちとは何かは説明した。しかし、どうしてフレンは自分とその様な行為をしたがるのか。

 そもそもの原因を探ろうとするが、フレンは既に答えを述べていたのだ。

 ――好きな人とする最後のいべんと。

 またもや、幻覚の盥(ニ回目)が容赦なく自分に降り掛かる。

 好きな人、好きな人って、自分のことを言っているのだろうか。例えそれが真相だったとしてもショックでもなく、寧ろ喜ばしいと感じる己は少し可笑しいのかも知れないとユーリは遠い目をして明後日どころか五億年くらい先の方向を見つめた。

 だって、こんなに可愛い、天使の様な子供に好かれて嫌だと感じる者はいるのだろうか。

 否、いない。

 笑うと花の様な、そんな子に綺麗だの好きだのと告げられている現在の自分に対する優越感たるや。是非とも、彼の可愛い口から全てを聞き出したい。

 ユーリはニヤけるのを抑えつつ、目の前の自分を口説こうとしている小学生に問うた。

「フレンはオレが好きなのか?」

 質問をして数秒も経たぬ一瞬の内に、赤いインクでもぶちまけた様に真っ赤に染まるフレンの顔。ゾクゾクと何かが背筋を這う感触。

 可愛過ぎる。過去に自分を追い回した変質者達の気持ちも分からんでも無い。だからといって生涯ヤツらを許しはしないが。

「……い、いつも朝とか挨拶してくれて、キラキラしてて……アパートの前の公園で僕が転んだ時、たまたま通りかかったおにいさんが家に帰ってまでして絆創膏持って来てくれて、消毒もしてくれて。初めて会ったあの時からおにいさんの事考えると凄いドキドキして、見かける度に嬉しくなって。だから、ぼく……」

 ――本気だよ?

 キュン、とどの器官かは分からないが、ユーリの中でその様な音が響いた。

 ような、気がした。

 初恋は叶わないとよく言われる。仮に目の前の、この子供の初恋が万が一、自分だったとしよう。

 ここで無下に扱うのも心の傷を産むだけではないだろうか。ロクに彼女も作らずに夕方から酒でも飲もうとしている、仕事ばかりの甲斐性のない男の為にフレンは勇気を出して“本気”だと言い張って自分に告白をしているのだ。健気ではないか、美しいじゃないか。

 ここのところ店が繁忙期だったと云う事も有り、働き詰めの疲れからか決断を下す位置がずれている事も多々あった。他の誰かが居れば、ユーリのこの判断は「お前疲れてるからさっさと寝ろ」とツッコミを入れてくれる筈だったのだが、部屋にはユーリと幼い少年が一人。誰もストップなんてかけてはくれない。

 

「……オレと付き合いたい?」

 

 きゅっと唇を噛んだフレンが、頷いた。こんな小さいのに付き合いたいとか、そう云った欲求が湧くのかと思うと半ば酔っぱらいに近いテンションのユーリからすると色んな意味で興奮してしまう。

 そして何だか身体が熱い。

 先程まで目の前の子供が汚い知識に触れるなど言語道断の勢いであったのに、自分への好意が本気であると云う事を伝えられると居ても立ってもいられなくなる。

 こんな子供にどうにかされてしまいたいと、疲れきった脳の判断ミスなのか、心の奥底の欲望なのかは分からないが――少なくとも、ユーリ自身がそう思ったのだ。

 

「――えっち、教えてやろうか」

 

 何を言っているんだオレは。心の中で、もう一人の自分が叫んでいるのが分かる。きっとそれは普段の自分を押さえ込んでいる、理性と云う名の自分なのだろう。

 けれど身体と本能は云う事も聞かずに、敷きっぱなしだった薄い布団の上に軽い身体を簡単に組み敷いてしまった。

 柄にもなく心臓がドキドキと騒がしい。

 見下ろす先には自分の顔が近づく度、恥ずかしそうに目をきゅっと細めるフレンがいて、子供特有の柔らかい肌や、甘い香りのする髪が扇風機の風を受けて揺れる。

 そんな反応をされてしまっては何でもしてあげたくなるではないかと、もっとフレンが戸惑う所を見たくなり、仕事着でもあるシャツのボタンを一つずつ外して行く。

 そんな中、フレンの視線は矢張り自分の身体に釘付けで、息を乱して行くのは肩が上下するを見てすぐに分かった。

「ぼ、僕のコイビトになってくれるんですか……?」

「んー……そうだな、これは差詰め、試験ってとこだな」

 自分の乾いた唇を舐めて、パサッと上着をその辺に脱ぎ捨てる。

 女の様な大きな胸がついている訳でもなく、柔らかな素肌がある訳でもない。筋肉がつき、男性らしく骨張った裸体。その割には透き通る様な白い素肌と控えめに色付いた乳首が目の前に広がってフレンはどこに視線をやればいいのか分からずに始終落ち着かないままユーリの瞳だけを潤んだ視界に収める。

 ユーリを思い出す度になっていた、あの少し変な気分が今はダイレクトに自分を支配している。

 夢にも出てきたユーリの姿。

 この季節になると薄いタンクトップを着て、下にはハーフパンツを履いたのユーリが洗濯物を干したりしているのだ。

 見てはいけない、と視線を泳がせてしまうのに自分では抑えきれない何かが勝手に顔をユーリの方に視線を向かせて、彼の白い二の腕だとか首筋を目に焼き付けた。

 それが今、目の前にあるのだ。フレンは目が回る様な気持ちで、ユーリから香る仄かな汗の匂いやシャンプーの香りに酔いしれる。

「おにいさんの事、気持ちよくさせてくれる?」

「えっちって、気持ちいいんですか?」

「まぁ、場合にもよるかな」

 オレはこっち初めてだし――と呟くや否や、ユーリの胸が自分の身体にぴたりと引っ付き、目と鼻の先まで顔が近づく。

 長い睫毛、綺麗な鼻筋、どんな人よりも一番綺麗で、かっこよくて、見ているとドキドキするユーリの顔が。

「わ、わ……っあ、あの、おにいさん」

「……な、敬語じゃなくてもいいぞ? 恋人になっても敬語とか変だろ?」

「あ、う……うん……」

 甘い声で囁かれ、身体の力が全て失われる。

 手をさり気なくユーリの脇腹に伸ばすと、肌理の細かい肌が手の平に吸い付いた。イケない事をしてる気持ち。自然に内股になるが、ユーリの身体が間にあって閉じれず、まるで彼を逃がさないとでも云ってるみたいに閉じ込めてしまう。

「オレのこと名前で呼んでみて」

 ちゅ、と耳の傍で聞こえるリップ音にさえも敏感に肩を震わせるフレンは狼に食べられる前の草食動物そのものに見える。

 けれど少年の内心は、恥ずかしいのに、もっと、もっととユーリを求めてしまう。幼い少年は心が思考に追いつかず、ひたすら戸惑っていた。

 ずっと好きだった憧れの人が、服を脱いで自分の目の前に居る、もしかしてこれは夢なのではないかと現状さえをも疑う出来事であった。

 

「……ゆーり」

 

 云われた通り、名前を呼んだ。

「良く出来ました」

 向けられたのは笑顔。囁く様な小さな声でしか彼の名を呼べなかったのに、それでも大層満足した様なユーリが頭を撫でて褒めてくれる。

 嬉しい、と顔が自然と綻んで、目の前の身体に抱きついた。

 そんな赤ん坊みたいに甘える少年を抱きかかえたまま、ユーリは体勢を変えて胡座をかいた自分の脚の上へフレンを抱えて乗せる。丁度、向かい合わせる形で。重くないかと心配するフレンに「軽過ぎ、もっと食わねぇとデカくなんねぇぞ」と返して、そのまま相手の手を取れば自身の胸や腹を撫でさせた。

 柔らかな手の平が自分の身体をなぞって、ユーリがピクリと身体を跳ねさせる度に、少年はどれだけ興奮しているんだろうかという所まで考え始める。

 呆れてしまうが衝動は止まるどころか強くなって、幼い好奇心を求めるみたいに腰が揺れ始めた。

「なぁ、ほら、オレの事好きにしていいんだぞ?」

 触って、と強請れば大袈裟なくらいに固唾を飲む音が聞こえた。少年の手首を握っていた手を離すと、後は勝手に少年の手が赴くままに動き始める。

 腹筋の筋が薄らと浮かぶ腹を撫で、平らな胸を強引に揉もうとする。胸が好きなのだろうか、熱心にそこを触られて息が乱れるのを自覚した。

 夏の空の下、クーラーもつけずに壊れかけの扇風機がカラカラと笑う音。汚いアパートの一室、求めるまま、自分の身体を撫で回す手の熱さに思考が蕩けて行く。

「は、ぅ……いいにおい……」

 そうして香りに吸い寄せられるみたいに、フレンが手つかずの乳首に唇を寄せた。

 これにはユーリも突然の刺激に驚いて地声よりも幾分か高い声が一瞬漏れて、思わず止めようとはするが、ぴちゃぴちゃと吸ったり舐めたりをする小さな舌が見え隠れして駄目だと云う事も出来ないまま何も知らない愛撫に口元が自然と笑みを浮かべて、淫らな喘ぎ声を紡ぐ。

 ふうふう、とフレンの熱い息を感じて、弄られていない、もう片方も切なくなり「こっちも指でして」と告げればコクンとフレンが頷いて、一度胸元から顔を離すと期待だけで既に強度を持ち始めて勃起した淫らな乳首に吸い付き、唾液で濡れそぼった方をクニクニと押したり潰したりと好きな様に嬲る。

「ン……っあ、フレン、上手」

「ちゅ……んむ、は、ぅ……ゆーり」

 褒めてやれば声を上擦らせて夢中になる様子。

 そんな中、心無しか揺れているフレンの腰に気付いて、乾いた唇を舐めた。

 この行動の意味するモノが何なのか分かっていないのに、人体と云うモノは興奮に犯されるとこんな反応もするのかなどとしみじみと感心する傍ら、隠しきれない程に興奮し始めた自分の事も自覚して、フレンの腰の動きに合わせて自らも揺らしてみる。

「フレン、上向いて」

「……ぁ、ふぅっ」

 唾液の糸を引いて真っ赤に腫れた乳首から口を離し、ぼんやりとした顔でこちらを見つめたフレンの小さな唇にに噛み付くみたいにしてキスを仕掛けた。

 脅えて隠れた舌を吸って強引に絡めてみたり、綺麗で心地よい、乳歯が少しだけ混じった歯並びを堪能しながら歯茎を舌先でしつこくなぞる。

 そうして上顎をくすぐれば呑み込みきれなかった唾液で顎を濡らしたフレンの背が大袈裟に反って、感じている事をユーリに伝えた。

 御馳走を目の前にした時の様に次々に分泌される熱い唾液をフレンに飲ませようと流し込み、口内が自分で一杯になっている苦しげなフレンを見て『可愛い』とユーリは又もや悪い笑みを浮かべる。

「どうしたフレン、モジモジして?」

 漸く開放して、肩で呼吸をするフレンに首を傾げる。

 本当は分かっていた。

 フレンの小さな手が自らの股ぐらをギュッと何か押さえつけるみたいにして身悶えている事も。ああ、コイツの頭の中は淫らな事で一杯なのだろうな、何をされるんだろうって期待しているのだろうかと考えるだけで背筋に何かが這う様な快感が他の思考を停止させた。

 長い睫毛に沢山の涙の粒を浮かべて、口元はテカテカと濡れて赤い舌が様子を見ているみたいに覗いている。

 駄目だ駄目だと思う背徳感が余計に興奮を齎し、抑えがきかない。なんたって、フレンの行動一つ一つに、好き、と訴えかける様な甘えた一面が垣間見えるからだ。

 何でもしてやりたくなる。

 壊れた愛情はどんどん質量を増していった。

「なんか、変だよ……僕、おしっこしたい訳じゃないのに、おちんちんがくすぐったいよ……っ」

 ぐしゅ、と半ベソをかいて、助けて欲しいと視線が訴える。その手の下はどうなっているんだろう、と大体の事は予想出来るのに意地悪をしたくなって「見せて?」と優しく声をかければフレンはゆっくりと手を退かせて、ズボンのホックを外すと、ユーリの上でそれを脱ぎ捨てて青い生地のダボついたトランクスを晒した。

 この子の事だから、勝手にブリーフを履いているのかとばかりに思っていたが。まさかの柄物である。

 少しの驚きに一瞬キョトンとするも、すぐに目線はある一点に集中した。

 心無しか布が張ってある所の、丁度、頂点部分。

 そこが少し色が変わっている。

 この歳でそういった事も出来うるのかと半信半疑になりつつ、きっと自分以外は触った事のないであろう初物の其れを下着の上からこね回す様に手の平で撫で付ける。

 手の平には、僅かに濡れた感触。きゅっと先の方を指で摘み、クニクニと強弱をつけ乍ら刺激を与えればジワリと布の染みが少しずつ広がって行くのが愛らしい。

 何を口に出せば良いのか分かっていない様子のフレンを置いて下着を脱がせ、慌てて何かを云おうとしたフレンに「助けて欲しいんだろ」と声をかけると耳まで赤いフレンが「でも、直接さわられると」と何やら困った様子である。

 直接触られると?

 その続きが見たいユーリに取っては、チャンスも同然である。

 下着を脱がせて見れば、ぷるんと皮も被ったままの小さな性の象徴が、甘そうな透明の蜜を垂らせて勃起とまでは行かないが僅かに頭を擡げている。

 それは呼吸と共にピクピクと別の生き物みたいに動き、糸を引いて自分の足の間に淫水を滴らせた。

 自分の片手で覆ってしまう事など容易な大きさ。

 フレンの性器を手の中で暖める様に包み、そのまま牛の乳を絞って搾乳でもするかの様な動きで指の一本一本で刺激を加えて揉み、上下に扱く。

 あ、う、と言葉にならない声を発するフレンはしがみつくみたいにユーリの腕を掴むが、それは動きを静止させようなんてつもりは一切見せなかった。

 むしろ扱く手の動きに合わせて腰を振って、未知の快楽に溺れている様な素振りを見せる。

 プクッと粘着質な雫が先端で生まれては、次々と糸を引き乍ら足下を濡らしていく。すると段々直ぐにでも分かるくらいにそこは濡れそぼって、ユーリは扱く手を止めると一番敏感な先端を人差し指で弾いてコリコリと弄り、皮の間に指を挟み込むとグリッと回して隙間を作る。

 そのまま覆ったままの皮を、ゆっくりと痛いと云わない途中までの部分を丁寧に剥いてやった。

「ゆぅ、り……っユーリの手が僕のおちんちん触って……あっだめ、だめだめ、ぼく、恥ずかしい声でちゃっ、う……や、ぁッ」

「フレン、ここもちゃんと綺麗に洗ってるか? 皮の下も、こうやって、垢をとんねぇと」

「ひぐっ、は、ぅ……っやだ、なんか、出ちゃうよユーリ、きもちい……っ」

 皮の下の、少し色が濃い部分も水音を態と響かせて執拗に弄ってやる。何かが出ちゃうらしいフレンの様子に、ユーリは見るからに上機嫌になって、手の動きを速めると柔らかな頬にキスをしつつ耳に吐息を吹きかけた。

「何がでちまうのかなぁ……おにーさん見ててやるから、頑張ってぴゅっぴゅしような?」

「や、ぁ……んっあ、も、やら、ゆーりぃ……っ」

 手の動きを速めれば速める程、フレンの呂律が怪しくなっていく。

 淡い色の小さな睾丸をあいている片手で優しく揉み、一生懸命腰を揺すっているフレンに自分の後孔が疼いてくるのが分かった。こんな風に、自分もがっつかれたら。いくら小さいとは云え、何も咥えたことのないそこを、こんなに遠慮も無しに乱暴に突き上げられたら自分はどうなってしまうのかと考えると、下着の下の其処が期待でキュっと締まったのが分かる。

 目の前のこの子に、どうにかされたい。そうこうしているとフレンが一際高い声を上げて、自分の拳にドロリと何かを吐き出した。

 栗の花にも似た性の匂いも控えめで、手の平に吐き出された暖かな淫汁は半透明、其処に少し白みがかっている程度のもの。

「よく頑張りました」

 けれどまだまだ、開放する気なんてない。

 吐き出されたものを嬉々として自分の腹の上に垂らし、見せつける様な動きで撫で回す。

 暖かな心地良さ、おまけにそれはトロっと横っ腹を垂れて行く。興奮した頭は己の暴走を誰も止める事なんて出来ない。

 目が虚ろになりつつあるフレンを再度敷き布団に座らす。そして自身も胡座をとくと膝を立たせた形で足を広げて座り、腰を浮かすとそのまま下着ごと、下半身の衣類を全て取り払った。

 先程までハイライトも薄くなっていたフレンの目が、ギョッとした後、惹き付けられるみたいに自分の勃起した性器に注目する。フレンの視線を感じ乍ら、敢えて厭らしい指遣いで撫でて自慰に浸る。

 見てろなんて一言も云ってもいないのに、フレンは段々と大きくなって行くユーリの手の動きを追った。

 視線に段々と口元の笑みが深くなる。カウパー液を人差し指で広げて滑りを足し、ぐじゅぐじゅと泡立つ様な乱暴な動きで一気に上り詰めた。

 けれど絶頂の手前、息を止めてグッと堪えると尻を突き出し、さっきから疼いて堪らなかった後孔に濡れた指を宛てがった。

 戦慄く其処は絶頂も手前だからだろうか、ヒクヒクと息づいて貧欲に押し当てられた指の腹を啄む様な動きをしてみせた。

 後孔の皺を伸ばしながら何度か周りをマッサージして、遂に中指の先をグッと押し当てる。

「んっぁ、な、オレのここに、指入ってくとこ、っふ、ッ見てて……?」

 首を傾げてフレンに誘う様な視線を向け、彼が頷くよりも先に、やや強引に指を押し当ててやればズブズブと埋め込まれて行く。

 ギュウッと中が締まり、肉を掻き分けるみたいにして指に纏った己の精液を腸壁へ塗り付ければ自然と腰が浮いてしまう。

 其処に注がれるのはまたもやフレンの視線。

 可愛がっている小学生が見ている前で、自身の排泄孔に指を挿入して広げて腰を振って、感じて声を上げている様子を客観的にイメージするとあまりに変質的で実に興奮する有様だった。

 自分がこんなアブノーマルな一面を抱えていたなんて知りたくなかったが、今こうして指を増やして短い間隔で抜き差しし、中に入った空気が時折恥ずかしい音を出し乍ら、外に漏れる事も気にせず快楽を求めているのは紛れもない自分自身である。

「ふれ、んぁっ……おれの、ここの穴どうなって、る?」

「えっ、あ、ゆ……ユーリの指を、食べるみたいにして……たまに中の赤いのが、指抜く時に引っ張られて、チラチラ見えてて……」

 言葉を続けようとしたが、フレンはその後、何も言わずにユーリの尻臀に触れるとグニっと左右に開き、指が食い込まされて赤く腫れた後孔に興味津々の視線を注ぐ。

 強引にしたからか、矢張りジンジンとする痛みは当然あった。でも、フレンの熱い息がかかってそんな痛みも忘れてしまいそうになり、自分のこのキツい中でフレンの可愛い性器を気持ちよくさせれたら――そんな想像をすると再び心臓が跳ねる鼓動が大きくなる。

 すると突然、後孔を濡れた何かが通った感触。

 まさか、と顔を上げれば。指を食い込まされた後孔に、唾液を注ぎ込んでいるフレンの姿があって、思わず汚いと脚を閉じようとするが丁度、閉じ難い位置にフレンの身体が。

「濡れてないと、んむ……痛いかなって」

 余計なお世話だっただろうか、とでも聞いてきそうな瞳。そんな瞳には無言で首を横に振るしかできまい。

 皮が突っぱねて、切れそうな事に気付いてくれたのかも知れないし、ユーリは自分の後孔を丹念に舐めるフレンの舌に感じ入って指の抜き差しをその間は止める。

 溢れるくらいに注がれた唾液。フレンが身体を退かして、ユーリが再び指を動かすとグポグポと先程よりも卑猥な音が聞こえ、注がれていた唾液が外に溢れては中に戻し、溢れては戻しを続けた。

 そんな後孔を慣らす場面もフレンの視線を浴び乍ら進め、指を少しずつ引き抜いて行く。

 突然、中を荒し回っていた異物が引き抜かれた事によって、後孔は針の先くらいの隙間を空けて何かの訪れを待ち望んでる様に、筋肉を縮小させた。

 其処からは、ただただ求めるだけであった。

 

「んじゃま、ここにフレンのそれ挿れて」

「……こ、こに?」

「そう。これがえっちってこと。其の為に慣らしたんだからさ。普通は男女なんだけど、まぁこうする事で男同士でも出来るってこった」

 

 フレンの性器を指さすと、少し恥ずかしそうな声が「そうなんだ」と呟いて僅かに納得すると自分の性器を取り出し、先程ユーリに施されたみたいに数回扱く。そのまま膝立ちで距離を詰めて、手で支え乍ら指でグニっと開かれた後孔に腰を押し進めた。

「ひっ、は、きつい……ッ」

 少しずつ埋まって行く小さな性器。

 フレンは中の柔らかな肉と歓喜で締め付けるそこにすぐに反応したが、ユーリは目を細めて「がんばれ、ほら」と余裕を見せつつ己の其処に少年の性器が埋まるのを恍惚の表情で見つめていた。

 太さも長さも矢張り苦痛を感じる程のものではない。

 少し進んで休憩を挟み、根元まで挿入し終えた頃にはフレンの顔は完全に蕩けきっており、肩で大きく呼吸を繰り返す姿はユーリの後孔で感じているという事実に少しも反しておらず、もはや明確であった。

 自分の中に挿入しただけでこの反応。このまま動いたり、締め付けたりしたらどうなるのか。ユーリは後ろに手をつくと、フレンに声も掛けずに腰を揺らして快感を貪り始めた。

 丁度、長さ的に先端が前立腺を擦るのだが、ユーリはまだ不慣れな為に其処でえられる快感を拾うのは難しかった。だが其処を突かれると、たまに電流が流れる様な刺激が走る事がある。何度も何度も、同じ様に其処をフレンに抉らせると、先端を壁で押し潰され続けるフレンが泣き乱し、全身を振るわせユーリを感じていた。

 まるでフレンの五感を全て支配している様な。彼の身体を抱き寄せて舌を押し付け合うだけのキスをしてギュッと締め付け、再び腰を揺すっての繰り返し。

「だめっ、ユーリにっ、赤ちゃんできちゃ……っひあ、あ、やぁ」

 このままだと自分の中に出してしまう事を危惧したのか、フレンが的外れでも自分を気遣う様な声を発したのが愛しかった。

「孕ませて、くれっよ、ぁっ、フレンの赤ちゃんの種、おにいさんの奥で、んっ……一杯、出していいからな……?」

 ユーリもそれに応え、フレンの脳をとことん甘やかす様な声で誘う。するとフレンが一際大きく身体を跳ねさせ、ユーリの腰に自分のを押し当てた。

「でる、でる……っ! またっ出ちゃ――っあっあ、ひんっあ、も、ユーリ、ユーリぃ……っう、あぁっ」

 自分の中に広がる、仄かな熱。フレンに中出しされた、まるで幸福を噛み締める様な笑顔をユーリは零し、自分の後ろ孔からトロトロと溢れる精液を見下ろした。

 中から草臥れた小さな性器を抜き取り、「よくできました」のキス。フレンは力が抜けた様に微笑んで、其処から意識を手放した。

 

 

  ◇

 

 

 ――フレンの自宅に、フレンがうちに遊びに来ていたのだが、疲れて寝てしまったと大方嘘なのか本当なのか分からない連絡を入れて、今日はこのままオレの家で預かりますと話を付けてからダルい腰を叩いて居間に戻った。先に自分の寝床で横になっているフレンの隣にユーリも寝そべり、暗がりでふと目が合えばユーリがフレンの前髪を退かせて額にキスをする。

 既にもう起きていたフレンはくすぐったいよと目を細め、ユーリの腰に抱きついた。

 先程まで一緒に風呂に入り、洗いっこをしていた様子を思い返せば十歳と云えど子供であるのには変わらないのに。

 どうしてフレンの告白を素面に戻った今も断る事を躊躇しているのだろうとユーリは頭を抱えた。先程のあれは、つい出来心なのには変わりはない。ならばここで其れを説明して、フレンには正式に自分は付き合えない事を言おうとするが其れも出来ず。

 ユーリはブロンドに顔を埋めて、もう眠ってしまおうかと目を閉じた。

「……ユーリ」

「……ん?」

「僕、きっと大人になったら……迎えに行くから」

 誓うかどうかは、兎も角。

 伸ばされた小指に「どうも」とだけ返して、ユーリも指を絡めた。

 ただの一日の過ちで、続く事も発展が約束された訳でもない秘密の出来事。

 この二人の関係は実に、ユーリが三年後、海外へ発つまで何ごとも無く終わりを告げる。

 

 恋人になる為の予行練習と云う名目で、たまに出掛けたり、キスをするのみの関係だけは辛うじて続けることを許された。ユーリからすれば可愛い子供の相手をしてるだけ、一方フレンからすれば俄然本気の恋愛だった。

 

 そうしてユーリが海外に旅立ち、中学生になったフレンは見送りもせずに、家主が居なくなったアパートの部屋の前で雪空を見上げた。凍えてしまいそうな寒い冬の日だのに、寒さも感じないくらい張りつめた感情を噛み殺して呑み込むことで精一杯であった。

 厚い灰色の雲から降り注ぐ白い雪を、ただただ眺めていたのだ。

 

 周りの誰もが知らない秘密の恋愛。

 

 恋愛だと思っていたのが例え自分だけでも、ユーリからすれば遊びにさえ相当しなかった関係だとしても。

 僕は貴方が好きでした、オレンジ色のペンキが剥がれかけている、ドアに一方的に呟いた。

 軽はずみな貴方の、中身なんて何も無い、無重力で宙に浮かぶ「オレもだよ」の声が聞きたくて。

 けれど何も、フレンの耳には聞こえはしなかった。

 

 

     

 

 

         ◇  

 

 

 

 

 

 

 

 ――十ニ年後。

 

 

 

 

 海辺の小さなレストランを営む男性の元に、美しいブロンドを揺らめかせた一人の若い男が訪れた。

 主にランチ時に混み合う店としては、一番人が少なくなる夕暮れ時に現れた客は珍しかった。

 最初はただの旅行者かと思い、彼の注文を聞いて暖かな手料理を出す。

 それにしても何処か見た事のある、硝子の様な瞳。あの様な知り合いがいただろうかと考え込むが、店主には中々見当がつかない。

 まぁ気にする程の事でもないかと一人で納得し、調子の悪くなったラジオから、途切れ途切れに聞こえるアコースティックギターの引き語りに耳を傾け、時折思考の端の方で海猫がニャアと鳴く。

 店主は肩につくか、つかないかくらいの黒髪を紐で縛り直して横文字の新聞を広げた。

 夜になったらまた常連の男達が酒を飲みに店に訪れる。良い女が居る、と紹介されても相も変わらず、本気にはなれず。

 何故ならば、男の中ではまだ終った訳ではない恋愛が胸の中を支配していたからだ。今日もきっと周りのお節介で酒の場で女を紹介されるのだろうなと。そういう気は今の所ないと云い続け、ずっとそうじゃないかと云われ兼ねないのでそろそろ他に何かないかと頭を掻いた。

 

「おにいさん」

 

 久しく聞かない、母国の言葉だ。

 店主は目を見開いて顔を上げて、自分をおにいさんと呼んだ若い男の方を見る。

 目が合った瞬間、ブロンドは照れた様に夕焼けと同じく顔を仄かな桃に染めてはにかんで、席を立つとカウンターを挟んだ向こう側に居る自分の目の前に風と共に現れて、唇と奪っていった。

 頬を撫で、目尻の皺を指先で撫でられる。

「……なんでここに」

  ロクに行き先なんて伝えた者など居ない。ましてやお前には、何処に行ったかさえも伝えなかったのに。

 随分探したんですよ、とポカンとする男の前で態と不貞腐れた様な顔をしてから「また貴方に会えて良かった」と心底安心した様な顔で告げられる。

 

「セキニン、取りに来ました」

 

 あまりに明確な答え。そうか、そうだった。責任を取ると、お前は云っていた。

 店主は吹き出して笑い声を上げて、随分と大きくなった肩を叩いて、一言だけ。

 馬鹿だなぁ、それだけ呟いた。

 

 僕の恋人になってください、遥々こんな所まで自分を追いかけてやって来た頭を撫でて「もうオレはキレイなおにいさんでもないオッサンだけど」――いいのか、含んだ物言いに、貴方としか一緒にいたくないんです、と。

 

 ずっとキレイだと思ってました、傍にいたいと思う様になりました、貴方を忘れた事は一日もありませんでした、一目惚れでした。

 何年経っても、貴方を本気で僕に惚れさせたかった。

 

 背中に隠していたらしい花束を渡され、波の音が聞こえる小さな店の真ん中で二度目のプロポーズをされる。

 

 ――あの占い師、本物だったのか。

 唐突に、そんな事を思い出して、男は、彼の言葉に。

 

 

 

 

 今度は順番を間違えずに云える。

 おにいさん、ボクと恋人になってください。

 

 

 

 

                      

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